T-4 冷凍機・ヒートポンプによる空気調和


1 実験目的
 本実験では一般的に用いられる蒸気圧縮式冷凍機による空気調和(空気の温度と湿度の調整)での,空気の温度と湿度の変化を測定する.また,エアコン(冷凍機・ヒートポンプ)の性能に熱源の条件がどのような影響を与えるかを明らかにする.実験装置は家庭用のエアコンに一般的についている冷房機能および除湿機能と同じ動作をさせる.

2 実験装置
 図1に実験装置の概略図を示す.冷凍機では,圧縮機入口(状態点1)・出口(状態点2),凝縮器出口(状態点3),蒸発器入口(状態点4)の冷媒温度,圧縮機入口(状態点1)・出口(状態点2)の冷媒圧力,凝縮器と膨張弁の間で冷媒流量を測定している.凝縮器で熱交換をする高温熱源は水(図中黒線)であり,流量をフロート式流量計により測定している.蒸発器(冷却装置)で熱交換する低温熱源はダクト内の空気である.空気は矩形ダクト内を送風装置により流れ,ダクト内で空気調和を行う.ダクト内では,冷凍機を用いた冷却装置により冷却する.また,冷却装置では減湿も行う.冷却装置での減湿により空気中より取り除かれた水の体積をメスシリンダーにより測定する.風量は最大13m3/hまでインバータ制御によって任意に調整でき,ダクト出口の流速を風速計により測定している.実験では冷却装置前後での空気の温度と湿度の変化を確認する..

図1 実験装置概略図

図1 実験装置概略図

3 実験条件および実験方法
 実験は低温熱源であるダクト内の空気と高温熱源である冷却水の条件を変えておこなう.低温熱源であるダクト内空気の速度,高温熱源である冷却水の流量,温度を実験時に指示された条件に合わせる.実験装置の条件合わせは,実験装置本体操作盤および操作表示盤のスイッチや調節器を用いてTAが行う.操作後, 以下の手順で実験を行う.
  1. 定常状態に達したら測定を開始する.測定時間を計測し始めるのと同時に,冷却装置から出ているチューブの先にメスシリンダーを設置する.
  2. 所定の計測時間の経過の後に,測定を行う(測定値表を実験時に配布する). 測定した冷媒の圧力(PR1,g, PR2,g)はゲージ圧(大気圧との差圧)であるので,次式により絶対圧に変換する.大気圧Paは0.1MPaとする.
    PR[MPa] = PR,g [MPa]+ Pa[MPa]
  3. データの整理を行う.
  4. (2)-(4)の手順を繰り返す.

4 実験データの整理方法
・冷凍サイクル P-h線図
 条件ごとに別のP-h線図[1]で位置を求めエンタルピーを求める.
 冷媒の状態点1(蒸発器出口→圧縮機入口)のP-h線図上の位置を冷媒の絶対圧力PR1[MPa]と測定温度TR1より求める.求めた位置の横軸の値から冷媒比エンタルピー hR1[kJ/kg]を求める.
 冷媒の状態点2(圧縮機出口→凝縮器入口)のP-h線図上の位置を冷媒の絶対圧力PR2[MPa]と測定温度TR2より求める.求めた位置の横軸の値から冷媒比エンタルピー hR2[kJ/kg]を求める.
 冷媒の状態点3(凝縮器出口→膨張弁入口)のP-h線図上の位置を冷媒の絶対圧力PR2[MPa](凝縮器内では圧力がほとんど変化しないため,同じ圧力とする)と測定温度TR3より求める.求めた位置の横軸の値から冷媒比エンタルピー hR3[kJ/kg]を求める.測定温度が飽和温度であった場合は,飽和線上(液側)にプロットし,その点の冷媒比エンタルピーを求める.
 求めた状態点1から状態点3のエンタルピーの値を計算値の表に記入する。
・冷凍サイクル 熱交換量と仕事率
 蒸発器(状態点4→1)での空気から冷媒への質量流量あたりの伝熱量φE[kJ/kg]は,蒸発器出口(状態点1)の冷媒比エンタルピーhR1[kJ/kg]と蒸発器入口(状態点4)hR4(= hR3)[kJ/kg]の差より次式となる.
φE = hR1 - hR4
 圧縮機(状態点1→2)での冷媒がされた仕事率l[kJ/kg]は,蒸発器出口(状態点1)の冷媒比エンタルピーhR1[kJ/kg]と凝縮器入口(状態点2)hR2[kJ/kg]の差より次式となる.
l = hR2 - hR1
 成績係数ε[-]は,仕事率L[kW](電動の圧縮機による蒸気圧縮式の冷凍機であれば消費電力)と冷却量ΦE[kW](外部から冷媒への伝熱量)の比で次式から求められる.ここでG[kg/s]は冷媒の質量流量である.
式(3.4.1)
・空気調和 湿り空気線図
 冷却装置前後の乾球温度TA3TA4[℃]および湿球温度TW3TW4[℃]より,湿り空気線図を用いて,相対湿度U3U4[%]を求める.

8 参考文献
[1] NIST,REFPROP8.0,(2007).